FC2ブログ

2019-01

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

15分ライティング

曼珠沙華 真田主従

旦那が百合根だ百合根だとか言って掘ってきたから慌てた。
「それ違うからねちょっと!駄目だからねほら口に入れない!」
百合根だって蒸さないとおいしくないのに、ばきりと割ってまっしろなとこ舐めようとするから焦った。
茎にも、根にも毒のある草だ。水にさらしてずっと置いておけば毒は抜けるが、そうでもないのを口に入れさせる訳にはいかない。
土まみれの小さい手をおさえて取り上げる。子供の動きだ。簡単だ。ぴいぴいと喚くから木の上に逃げた。
つん、と、球根の割れ目から土と、水気の匂いが漂う。
子供は木の下で花を振り回して怒っている。槍のようだ。鮮やかな萌木の柄。花は、穂先にともる炎のようだ。

手にした球根はみずみずしく真っ白だった。俺の母親はこれに歯を立てて貪ったのかと、枝の上にしゃがんだまま、手の中の球根をしげしげとながめて、出来心で舌を出す。
舐めれば、ぴりりとしびれて、苦かった。うえ、と顔をしかめて、肩越しに遠くへ放り投げる。塀の外に出るように。子供の手の届かないところまで。
がさ、と塀の外の茂みが鳴って、びいっと子供が火がついたように泣き出した。
するりと木の上から滑り降りて、しゃがんで下から目線を合わせる。
「弁丸様」
「うつけもの!」
痛くない拳が降ってくる。うつけもの、あほう、まぬけ、と舌足らずに罵倒されながら、やわらかい子供の握りこぶしがぽかぽかと俺様を殴って、だけど泣きながらだから4回に1回ぐらいは外してしまうので、思わずにやにやしてしまった。
「さ、先の宴会の折」
ひく、と子供がしゃくりあげながら、男らしく右の腕で涙を顔ごと拭う。
「おまえがゆりねを食いそこねたというから取ってきたのだというに」
このうつけ、と泣くからかわいくなってしまった。
抱き上げるといつもより体温が高くて、遠くまで行ってきたのかな、と思う。
「あのね旦那、あれはゆりじゃないんですよ」
百合の花も知らないで、きっとこの間の雨で土手のどこか、崩れたり流されたりしている中に、花と繋がって球根だけあるのを見つけたのだろう。台所によく出入りしては、女中共にかわいがられている旦那のことだ。どうせ、百合根ってのはねえ、花の根っこで、こんなんなんですよ、とでも、ざるの上に盛ったのを見せてもらってミ覚えたのだろう。何も知らずに、持ってきたのだろう。

かわいいかわいいとあやして歩きながら、自分はあの毒では死なないのだから一口ぐらい食ってやればよかったかなと思った。





曼珠沙華で堕胎しようと思ったけど失敗した母親というはなしをかきたかった。

Nevermore «  | BLOG TOP |  » 15分ライティング

プロフィール

Q子

Author:Q子
東軍と佐助。

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カテゴリ

bsr習作 (1)
告知 (2)
\デデーン/ (2)
ヒッキーさなだくん (3)
いろは譚 (1)
小十佐 (6)
家政が宇宙 (4)
伊達佐 (14)
いえまさかもしれない (12)
幸佐 (11)
デュラ (26)
お知らせとか (1)
bsr (1)
東方 (5)

検索フォーム

リンク

このブログをリンクに追加する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。