2017-09

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伊達佐習作とは呼べない感じの何か

ひとが出来ないことが出来るのにひとが当たり前に出来ることが出来ない。

跳ね上がるときは自分の体はとても軽いのに、枝を蹴って懐へ飛び込む時の体ときたらまるで鉛弾だ。
重たい。重たいのが風を切って落ちる。まっすぐに、意思を持った重さだ。体中の血肉が重さを持つ。
それが気持ちいい。
だのに最近うまくいかない。

旦那を庇って怪我をした。
かすがには鼻で笑われた。
多分、もう右足が、ひょっとしたら、おそらく。
信じたくないから信じないで、熱が出るから、うつらうつらと臥せっている。
旦那の知らないところで。

熱がずっと、そこを切り落としてしまったみたいに怪我したところから引かない。
「だめかな」
布を剥がす度に暴れるほど痛い。
膿が臭う。
里から呼んだ生臭坊主は黙って足の布を取り替える。
「それでもね……落としちゃ、やーだよ」
荒い息の間から笑いを、はぁはぁと零す。
えせ坊主の腕を、熱のこもった腕でやんわり押さえて。
だって、足を落としてしまったらもうだめだって見てすぐわかってしまうから旦那が。
旦那に。

織田を殺したのに雑兵に斬られて死ぬんだなあとか。
なんだっけ、昔青いのが言っていた。善人が泥棒に斬られて一切合切取られて、その泥棒が人生後半で改心しちゃって円満に子供とか作ってるとこにやっぱり泥棒が乱入して斬られて死ぬけどそいつは自分のこども庇って死んで幸せ、みたいな
なんだっけ。
アイロニー。

すこんと思いだしたきり眠りの中に木の葉みたいに滑り落ちて浅い夢を見ていた。アイロニーと、薄っぺらいのに重いのがひらひらゆらゆら。唸って、目を開けて、夢の名残を引きずったまま頭おかしくなってんのかなと思う。
ぼうっとしたまま瞬きをしたら冷たい涙が目尻から落ちて耳に入った。
「なんでいんの……」
「自分の刃物で怪我ァするなんざ愚の骨頂だな」
「うるさいよ……」
ちょっと、笑う。外は雨だった。夜だ。しんしんと冷える夏の雨夜だ。どうせ上田に来るのに、どっか別のとこに行くと見せかけて出奔してきたからこんなに遅くなって、雨が降るから、って宿を借りようとしたんだろう。多分、坊主は後ろ手に鉈を隠して薄く、戸を引き開けただろう。想像に難くない。明るさに左目を細めた青いのが中を見る、そこに俺様がいたんだろう。最悪だ。最低だ。俺様は上下するだけで痛い胸を膨らませては萎ませてふうふうと笑う。
「ていうかそういうのは旦那にさ、言ってやってくれよ」
自信過剰めとでもいいたいような目で青いのが俺様を見る。
「風車が壊れただけで泣いたんだぜ、あのこ……」
そうだあの風車は俺様が、紙問屋の番頭のとこにわざわざ通って習ったものだ。幼い弁丸様が身を弁えよと諭されてしょんぼりする度に折っては渡してやったものだ。涙の形で感情があふれる。くちびるは笑う。
えらそうにあぐらをかいた青いのがそっぽを向く。
篭手をつけたままの手で頭をかいて、ふと床張りの板に手をついて立ち上がる。
囲炉裏越しにそれを見た。敷いてあるむしろを伊達の足が踏む。俺の目の前に汚れた足袋があって、上向いた。剥き身の刀がきらりと光って、俺様の目を射る。
「……やめてよ」
起き上がろうと床に爪を立てた。じんじんと体中がしびれて体中が震える。心臓がうるさい。
「ばかじゃねえの、やめろよ、おい、あんたそういうの柄じゃねーだろ、なあってば」
「Ha、バカはてめぇだろ。……猿め」
顔が見えない。
青いのに呼ばれた坊主がたらいをひっくり返しながら湯を沸かす。
まだあるような気がした。
まだ、立てるような気がした。
二本の足で。

青いのが俺様の足を持って立っている。
かえせよ、と、言えないまま死んだ気がした。

上田はもう秋だ。
重く、重い、肉の体を一本の足の上で感じる。ぎゅうっと、ばねのようにたわめて、枝の上を見据える。
飛び出す時自分の体はまるで鉛弾だ。重たく、重たく、後ろ髪を引かれながら、引き戻されながら、上を目指す。
飛び乗った枝がたわんで紅葉が落ちて、ため息が出た。たぬきみたいに紅葉を頭に乗っけた旦那が庭で騒ぐ。
「おお、すごいな佐助!」
「旦那ーァ。忍びならこれぐらい出来て当たり前だろ。」
情けない俺様の言葉を聞いて、旦那は無邪気に、これからも頼んだぞ、とか。そういう言葉を言うのだ。それを聞く。
ようく覚えておいて、ひとりでも、耳を塞いで、その声を聞いて、人間の俺様を忍びの俺様に入れ替える。一振りの刀に。あるいは一本のくないに。もしくはひとつの大手裏剣に。

そうしていつか、足の仇と、青い背中に薄い鋼を突き立てて、みたい、とか。
思うだけ思って、生きている俺様は多分、今度は旦那の寝てる床下に潜り込んで泣きながら死ぬだろう。


アイロニー


まみたんごめんリベンジする
お誕生日おめでとうございます。

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東軍と佐助。

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