2017-09

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伊達佐習作

嫌いだといった口を塞がれてひどいことをされた。
下半身に落書きされたみたいな屈辱がまだ足の間にわだかまっている。
は、と短く吐いた息を聞き逃さない指がくるぶしの筋んとこを抓る。
「やー、めて、よ」
ちんこの先っぽがまだなんとなく痛い。
適当な感じに鷲掴みして服の上からごしごしこすられて、全然気持よくなかったのになんだかんだで結局勃った。そんで、笑われて、めちゃくちゃされた。
最悪だ。
ケツ痛い。
「俺様あんたのこと嫌いだってゆったのに」
「言った、だろ」
「……ゆった」
「いっ、た」
い、と歯を剥き出して些細な発音を直される。ついでにリピートアフターミーとかわっかんない言葉も使われて、いらいらした。
「知んないし」
ごろ、と頭を傾ける。ばたんばたんと手足を広げながら、畳の上に転がって落ちた。陽に焼けてない畳の青い顔降り。いっつも障子開けっぱにしとく旦那の部屋じゃ嗅げない匂い。小さいころ佐助が、庭で放し飼いの犬のように、あがるなと厳しく言いつけられた、縁側の上の世界の。
「俺様あんた嫌いだし」
ほっぺたをくっつけて畳をくんくんと嗅ぐ。厩の、飼い葉だけ詰まってるとこみたいだと思って、嬉しくなった。上田の城にあがった頃は、よくそこに逃げて青草に埋もれて寝てた。やわらかすぎるし全然隠れられない布団も、壁が近くない部屋も苦手で、庭の紫陽花の下の土がやらかいとことか、飼い葉の中にもぐりこんで寝てた。
畳は嫌いだけど、この匂いは好きだなあ、と思う。布団も、最近ちょっと平気になったけど本当は寝るときは固いほうが好きだ。体が重たいなあと思ってうとうとしながら、佐助が縁側から指先だけでも部屋の中に入れれば目を吊り上げて怒った女中頭の顔を思い出す。確か、ふくといった。天下無敵の弁丸様が泣いて怯えたおふくだ。去年流感で細くなって衰えて死んだおふく。

帰りたいけれど着物が隠されている。裸でも帰れるけど、どうせ向こうが飽きたら放り投げて返してくるのは分かりきっていたから面倒だった。体も重たい。だけど早く帰りたい。
考えるのが面倒くさい。
くるんと丸くなって嫌いだし、と小さな声でもう一度言う。たまに、思い出したみたいにめちゃくちゃしてくるから当たり前に嫌いだし、そんで、多分、向こうも自分を嫌いだ。嫌いなんだと思う。

こないだは下生えに潜んでたら火つけられて燻し出されたし、その次は四方から投げ縄掛けられて木から引き摺り下ろされた。で、今度は水ん中に発破ぼんぼん投げ込まれて浮いてきたとこ捕まった。魚取るのにだってご法度なやり方だ。腹が立つ。耳がつんぼになるかと思った。そんで起きたら口ふさがれてちんこ掴まれて、最低だ。

丸くなったまままだ痛いちんこをそうっと触って、ちょっとだけ気持いいのに安心しながらひとでなし、と毒づく。はやく死ねばいいのに、と声を尖らせても、聞こえない顔で後ろ手ついて、ぷか、と煙管をふかしている。
ちくしょう、と唸って、だけど忍びを生きたままつかまえるには効率的なやり方だ、と悔しがる。
そういうこと考えついて出来る辺り、すごく、似ているのだ。ひとには言えない事をするのが仕事の自分と。
国主のくせに。
旦那とおんなじ生まれのくせに。
飢えたりしたことない癖に泣いても飯が出てこない辛さを知った顔で農民の不幸を語るとことかすげー腹が立つ。
そんで俺様が、旦那が時々すごくおかしい事言った後で、間違ってない!って満足そうな顔する時とか、うわあ、って思って、好きだなあ、って思うとこ、同じようにうわあ、って目で、見てる。
それを知ってる。
そんで、なんで、と思うのだ。
あんた、武将だろ。ぐちゃぐちゃの紙くずみたいにされて育ってないだろ。猫の手に遊ばれる紙くずみたいに生きてきたわけでもないくせに、どうして、おんなじ顔すんの、ってとても腹が立つのだ。
だから昔っから揺さぶってやりたくて、嫌いだ嫌いだと繰り返して言っても俺様なんかどうだっていいように振舞ってテメエなんぞ眼中にねえぜ、余裕ぶって笑う。くせに、たまに部下を引き連れて袋叩きで狩り出して、体を使ってひどいことをして陰険な猫みたいに笑う。そんで最後にちょっとだけ撫でてやさしくしてから手離して、逃げてくのを高いとこから眺める。俺様が逃げ帰る先をまぶしそうにして見る。

何考えてんのか全然わかんないけど、ちょっとだけわかるのが嫌だ。

例えば、あんたから見れば俺は気楽で幸せだろうねえ、と皮肉を込めて憐れめるあたりとか。
旦那の近くにいて噛み合わないまんまでも、いざとなれば盾になって、後のことなんか全然考えないで好きに死ねる。ただ自分の好きなように旦那のためだよって使って死ねる。
だから、悔し紛れに俺様なんかどっかで野垂れ死ねって思ってるんだろうなあ、とか。
そういうふうに、ちょっとだけわかる。

だけど、あんた国主だもんねえ。とも、思わなくもないのだ。だって俺様羨んじゃったら終わりだ。はずれくじの土地で重たいのをゼイゼイ言いながら背負って、当たり前だって顔繕って虚勢張ってるのが全部パアだ。
だから、押し殺して俺のが一番だってずっと言ってる。疲れそうだな、と思って遠巻きにしたくなる。
その辺のひねくれた努力とか、可哀想だなあと思って、だから、生まれも育ちも違う俺様が同じ目をするのが気にくわないのも、わかるなあ、と。
でも、お前ひとりだけじゃなくて残念だったよね、とも思ってほくそ笑んで、くっだんねーな、と鼻から息を吐く。
ぐちゃぐちゃだ。
多分、とか、でもとかだけどが多すぎて頭が痛い。から、出てく時、首を触っていこうと思った。腹いせに。
で、指にはめてる鉄の、関節んとこで首の皮膚でも挟んでいってやろう、と。思いながら腰を引き寄せる手に黙って引きずられて、布団の暗礁へ乗り上げる。
利き手掴まれて猫をひっくり返す手つきで仰向けにされて、腹を無防備に晒させて見下ろしてくる。
やっぱり嫌いだ、と思った。
俺様があんたを嫌うやり方であんたは自分のことを嫌いなんだろうし、あんたが俺様を嫌うのと同じ理由で俺様は自分のことをちょっとだけ嫌いだ。
だからあんたがやっぱり嫌いだ。
「……さわんないでよ」
言った口を塞ぐ指をしゃぶって、子供の頃を思い出す。目を閉じれば水の中で潰されかけた耳がわんわんと鳴る。
口の中の指をちゅうっと吸って、肌があったかくて、気持いいな、と思いながら、早く旦那に会いたいと思った。
多分、触ってくる奴と同じくらいの強さで。

そういうのがわかるところもすごく嫌いだ。


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