2017-09

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

You Need The Other One

喧嘩と言えないような喧嘩をした。
返事をしたとかしなかったとか生返事だったとか聞いてなかったとか、大して大事な話でもないのに気がついたら怒っていて、またそれに自分も律儀に腹が立ってもう手が付けられなかった。
無言。まだ怒っている。腹の中でかっかかっかと募らせている。
気配で感じる文句の気配を感じて頭の中で言われるだろう文句を勝手に膨らませて再燃。
お互いに相手を理由に被害妄想的な追加燃料を自分の怒りにばんばんくべるものだから、部屋の中の空気からどんどん酸素が減っていく。自分は冷めかけているのに相手が一人で熱暴走していてつられて怒りの熾火に色がつく。

膝を抱えて爪を見下ろす。びしびしと空気に怒りが伝染していって、段々肌からも呼吸が出来なくなる。
座り込んだ冷たい床が自分の体温で温んで無闇矢鱈と悲しくなった。日曜日だった。晩ご飯は天ぷらで、大根おろしは甘くてたらの芽は春の味で、れんこんも歯切れよく、ご飯は少し固めで、筍のかつおぶしと和えたのもおいしくて、窓を開けたら少し涼しい風が入ってきて気持よくて、桜は散ったけどいい季節になったから後で缶ビールでも買いに公園突っ切る散歩に出ようか、なんてそんな話をして、楽しかった。楽しかったのに。

最近好きな芸人が出てるからとTVをつけた。自分のほうが先に食べ終わったから食卓を離れた。
それかな、と思う。多分そうじゃないだろうか、と思う。
とにかく政宗が怒った。理由はいつも言わない。プライドが高いんだと思う。自分の怒ってる理由がちっぽけでちんけだと知ってるから、そんな自分にも腹を立ててるし、そんな事で腹を立てさせるわしが憎くてたまらなくなるのだろうと思う。一旦は我慢をしようとして、耐え切れなくなって怒るのだと思う。
だいたいにおいて政宗の怒りは突然だし、突然激昂する割に理由については何も言わないから推測ができない。

不毛な怒鳴り合いを続けていると、自分で考えろと言うのはわしに甘えているのだ、そう信じていないとやっていられない時がたまに来る。避けようもなく。ひどく怒った時怒鳴るくせに窓を閉めると怒るのも、物にあたる癖があるのも、そうやって散らかした後の片付けは頑ななまでにしないのも、わしがするから、と、甘えているのだからと。
わしにわかって欲しいと思うから政宗は怒るのだと。
わしと心地良く暮らしたいから我慢せずに怒るのだと、信じでもしないと何もかも嫌になる時が来る。

政宗はまだ背中を向けたまま怒っている。じきに声がかかるだろうなと予測して、いるけれども、うんざりしてしまって口が開けない。窓を閉めてしまった部屋が熱くて、天ぷらの後の油の匂いがじったりと、政宗の怒りの気配と一緒になって肌にまとわりつく。
馬鹿馬鹿しいと最近そればかり考えている。
おい、とじきに政宗は言うだろう。
おい、なにか言うことはないのか、とわしに問うだろう。
政宗の頭の中にある正解に類似した回答ができなければ、またわかっていないの嵐がくる。
わかっていないとなじるくせに政宗は答えを決して教えない。口をへの字に曲げて睫毛を震わせて怒るくせに、こう言って欲しいのだとは決して明かさない。わかれ、とわしに要求をする。言わずとも分かれ、と。
真剣に向き合えという事なのだろうと思う。片倉のように。
求められているのだろうと思っても、付き合えぬと思ってしまうわしは薄情だろうか。
政宗を理解したいのだ、だから一緒に暮らそうと口に出したのはわしだ。あまりいい顔をしなかった政宗を口説き落としておいて、先に知りたいと求めておいて、今になって嫌になるのは卑怯だろうか。酷薄だろうか。

手持ち無沙汰で、足の指をいじる。小指の爪が変な形だった。親指の爪が伸びていた。
切らなければならないな、と爪切りのありかを脳内で探す。

政宗はむっつりと黙り込んでいる。最近は三日にあげずこんな喧嘩が続いていて、窓も開けられないし立ち上がれない。ただ黙って、どうしようかなあと冷静に考える。
ふと、部屋にこもる油の匂いにまぎれて政宗にはわしじゃない方がいいのではないかという考えが忍びこむ。
わしじゃなくて、もっと細やかで気が聞いて政宗の事をちゃんとわかってやれて素直でこんな時、ごめんなさいと泣けるような。形だけでもしおらしく出来るような。あるいは政宗のプライドを傷つけないように諌められるような。
例えば。

例えばなんて考えてしまえばキリがない。

こうしてわしに腹を立て続けて暮らすのは政宗にも不幸なのではないか、と責任を転嫁して幸福論などというものに想いを馳せる。そうして目の前の問題、政宗の冷めやらぬ怒りは放置。なだめる手段は考えずまた上の空だ。
政宗はわしのこういう所に腹を立てているしまた腹を立てる。今をやり過ごしてもまた同じやりとりで怒鳴りあう。わかりきっている。

わかりきっていて、うんざりしている。

溜息が出た。出てしまった。しまったと思いながらもうどうにでもなれと思う。
一緒にいれば仕草の一つ一つに難癖がつく、わしがいるから政宗は怒る。それでもわしが出ていけばまたその事について政宗は怒るのだ。
もう嫌だな、と思いながら膝に顔を埋める。目を閉じたものの落ち着かない体にゆらりと政宗が立ち上がる気配。
何を言われるか。専守防衛の手段を考える為に予測する。うんざりした。
政宗は身勝手だ。それをうつくしいと思ったし誰も本当には政宗に届かない。だから近くにいたくて、暮らし始めた。きっかけは自分で、いつも始めようとするのも自分で、必要とするのも自分で、考えたら駄目だと思うのに目が開けられない。
口を閉じているのが精一杯で、自分の体だけ、顔に押し付けて自分の肌で自分を慰める。
もういやだという気持ちがぎゅうぎゅうに体の中で圧縮されていく。外に出ようとするのを押し込めるたびに増殖する気がして、頼むから何も言わないでくれと伊達に祈る。だめになるのが怖かった。

黙って、ただ黙って政宗はわしを見下ろしていた。
わしの頭の中を抑えつけるので手一杯のわしを見下ろしていた。

ぺた、と裸足の足が向きを変えて離れていく足音がして、震えながら息を吐いた。薄く目を開ける。ぺたぺたと伊達が遠ざかる。慌てて顔を上げた。
真っ先に玄関を確かめて姿を探す。見つけた薄着の背中は台所で水切りかごから薬缶を取り上げていた。
薬缶に水を入れながら器用にタバコを咥えてライターに火をつける。
湯が湧くまでの間に三本を吸って、流し台のビールの空き缶に吸殻をねじ込む。
薄いTシャツに肩甲骨の線が浮いているせいで、仕草の一つ一つが手に取るようにくっきりと目に見えた。
換気扇に手を伸ばしてスイッチをいれる。最強に設定された換気が油の匂いと一緒に政宗のタバコの匂いも外へ送り出す。

薬缶が湯気を上げる。煙草の灰が落ちたのか、伊達が舌打ちをして口汚い言葉で何かを罵る。苛々と。
それでも、政宗が用意する湯のみはこんな時でも2人分だ。




Do You Need The Other One?

● COMMENT FORM ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://hatihys.blog136.fc2.com/tb.php/36-e35b9358
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

伊達習作 «  | BLOG TOP |  » ようわからん習作

プロフィール

Q子

Author:Q子
東軍と佐助。

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カテゴリ

bsr習作 (1)
告知 (2)
\デデーン/ (2)
ヒッキーさなだくん (3)
いろは譚 (1)
小十佐 (6)
家政が宇宙 (4)
伊達佐 (14)
いえまさかもしれない (12)
幸佐 (11)
デュラ (26)
お知らせとか (1)
bsr (1)
東方 (5)

検索フォーム

リンク

このブログをリンクに追加する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。