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2019-04

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FMP(アリス)

日曜日、週末の終わりにあなたは私の家に押しかけた。
私は人形のための家具の枠組みを作り終えてやすりをかけているところだった。
あなたの溜息で机の上の木屑が飛んであなたに気付いた。
黒目に星を映してあなたは私を見た。

かつてあなたは私を海に放り出された花束のようにばらばらにした。
やわらかい何度もにもわたる揺さぶりで私はデイジーの花びらがまったく散ってしまったように丸裸にされた。
夏が終わり、短い秋の間あなたはしじゅう空を飛び回っていた。高い空に舞い上がっていくあなたを私は何度も見送った。
冬が来てあなたは私の家に閉じ込もった。私たちは毎晩大鍋でお湯を沸かして暖炉の前で足を絡めた。
あなたは冷え性で氷のような足をしていた。いつだって。私はあなたの指先から逃れようと身を捩って、私たちはきゃあきゃあと悲鳴をあげながら戯れあった。腰骨と腰骨がぶつかって甘い痺れが走る時、暖炉に欠けた大鍋の中では泡がぷつぷつとはじけていた。くたびれきってしまうまでふざけあった後は炎の前でまどろんで、それからお茶を入れてたわいない話をした。
有機物理学だとか、吸血鬼の空腹中枢の在処に準じる精神論だとか。
私達の意見はいつでも若干の食い違いを見た。それが逆に私をほっとさせた。私たちの意見の大筋は二人の体のように寄り添い、けれど致命的なところで交わらなかった。話の種は尽きず、冬じゅうをわたしたちは暖炉の前で過ごした。

春になってあなたは出ていった。月曜日のことだった。
火曜日、私は解放された気持ちで部屋中の空気を入れ替えて、家にあるだけすべてのリネンを洗って干した。
シーツに、枕に、ソファーカバーに、タオル、その他もろもろのすべての布を。
そして人形たちを磨き上げ、階段という階段、床という床にワックスをかけた。
それから家中の模様替えと大掃除を始めた。まるまる三日間をそれに費やして、家中が冬とはまるで違ったようにしつらえられてやっと私は深く息を吐いて、前とは全く違う部屋に移されたベッドに潜り込んだ。

土曜日、私の目覚めは最悪だった。起きた瞬間から頭痛と目眩がした。人形に何かをさせるのも億劫で、布団の中に潜り込んだまま自分の枝毛を探して一日を過ごした。もちろん枝毛なんて一本もなく、ただ時間を無為に過ごしただけに終わった。
一晩中窓を開けたままなんとか落ち着いた呼吸をしようとしてそわそわし、大鍋にお湯を沸かしては火を止め、また沸かし、茶をいれては冷まして捨てて、朝方やっと人形のための家具をうっちゃりっぱなしにしていたのを思い出して机についた。

日曜日の朝、やっとのことで家具作りに集中し始めて時間を忘れた。

私の後ろで大鍋が吹きこぼれていたと、あなたがため息をつく。
目の前の木屑が吹き飛ばされて、目を覚ますように我に返った。
黒目に星を映してあなたが私を見た。

大鍋が吹きこぼれて燃え盛る火が消えるじゅっという音がする。
私のくちびるから秘密がこぼれた。




シャンソンみたいなアリス。右の耳たぶに星。

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