2017-11

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うそが本当に

最寄りの駅まで小十郎さんはついてきた。Suicaってこういう時便利だと思う。どこまで、とか。誰にもわかんない。
改札通る前に自販機の影で一回くちづけた。旦那のことは言わなかった。

俺様がだめだったこと、旦那以外みんな気付いてんじゃないかなあ、って思ってて、だからなんにも言えなかった。
だめだったのは俺様で、それに気づかなかった旦那で、でもそれをみんなゆるしてたんだと思ったら胸が潰れそうになった。
心臓がぐちゅ、って上からつぶされる感じ。それで死ねたらどんだけ楽だろう、って思いながら、好きだなあ、って思いながらシャツの襟掴んで引き寄せてくちをつけた。小十郎さんのくちびるは乾いていて、顔を寄せると嗅ぎ慣れた匂いがした。
くちびるを重ねながら信之さまのこととか、話したっけ、と思う。つま先だった足を地面に戻しながら、真田の旦那が二人目だって、教えたっけ、と考える。
「自分のものだと言えるものがいくつあると思う?」
ポケットで携帯が震える。その振動を下半身に結びつけて考える下衆な自分がいる。
「ほんとうに全部さいしょから、そのつくりから成り立ちから存在から成分からぜんぶ、自分のだって。」
小十郎さんがみじろぐ。その手を握る。
「携帯とかだってさあ、中のソフトの権利は会社とかのもので、充電する電気もやっぱり会社から買ってて」
言いながら訳がわからなくなる。
「ねえ本当に自分のだって言えるものをひとつでも持ってる?」
自分の主を思い出す。
下りの電車が着いて、人が一気に溢れて流れる。自販機の前を沢山の人が通り過ぎる。俺様が先にいたたまれなくなって手を離した。
ポケットで携帯がまだ震えている。
逃げてしまいたいと思う。
「どうしてばれたんだろう」
言わなければいいことを言ってしまう。
目を彷徨わせてもどこにも逃げ場が見つからない。
小十郎さんの手が俺様の腕をつかむ。
「お前どうした」
「どうかしてるよ。してたら……してたらさあ!」
なんだっていうの、と叫びそうになって押し黙る。このまましゃがみこんでしまいたかった。自分の弱さに目がくらむ。
だけどもう戦国じゃないから切った張ったもなくて絶望的な何かが起きても学生という身分からは逃れられなくてドロップアウトしたくない自分の将来への期待値というもの尊重して厚顔無恥を貫くしかなくて。
転校したくてもお金もない。母親は知らないところへ行ってしまった。俺様は現状維持をするしかない。

呼び出されたら向かうしかない。

「あんたひどい」
「なんだ、真田になにを」
「ちがうし」
ポケットでまだ、まだ携帯が震えている。あいつ向こうでずうっと俺様が出るの待ってんかとか思ったら笑えた。コール音に眉とか潜めてイライラしてるとか、わらえる。俺様程度の相手にそんなことしてるの最高にみっともない。
ねえあんたのご主人様に呼び出されたんだよメールでさあとかぶっちゃけたらほんと、楽になれんのか、とか。
考えたけど絶対無理だし。もうやだ。こじれたくない。相手が悪いみたいに考えるけど前世でやらかしたのは間違いなく俺様で逃げようも矛先の向けようもない。
はやくしにたい、とか逃げ腰で思う。こんな人間だから駄目なんだろうなと半分やけくそで考える。
「ねえもう行く……シャワールームある漫喫しまっちゃう」
ポケットで鳴動する携帯に気づかれたくなくて、上半身で小十郎さんを自販機の影から押し出した。
「ごめんヒスって。なんでもないから。」
喋る気もないのに引き止めて欲しかった。

離れながら、視線を感じて、もう何度目か、この人は本当は俺を憎んでるんじゃないかと思った。
今まで何回か、数えられないから結構何度もかも知れない。寝ている時に殺されるんじゃないかと感じたことがある。
錯覚かもしれない。
俺様が殺されたのをこの人は見たんだろうかと思う。ずる、と内側から長い臓物を引き摺り出される感じ。
あれがさいごで前の俺様は終わってる。けっこう肘とか折られてたし、あれもうほんとひどかったんじゃないかなあ、って。
小十郎さんと改札まで一緒に歩きながら思った。恋人つなぎ的に指を絡めて、離して、ばいばいをする。
改札にSuicaを押し付けながら、見たのかな、と考えた。
個人的には、見たんじゃないかな、と勘繰っている。やった後とか、俺様がぐったりしてるの見下ろしてる時にぞっとするほどうっとりした目をするから時々そう思う。
旦那と天秤にかけた事なんか一回もなかったり、そういうの、おんなじだから不誠実、みたいなテーブルに乗せて考えたことなかったけど。
階段を登りながら考えた。
ホームに出ると夜になって少し涼しい風が階段にこもっていた熱気を吹き払って呼吸が少し楽になる。
あの人実はけっこう俺様のことどうでもいいんじゃないかなあ、と思って、すんなり当たり前だと思ったのに、今更この世でなんだかなあ、という気分になってほんのり自虐的に笑った。

俺様がどうのより政宗様と俺様がっていう、優先順位が今でも当たり前なのが変に寂しい。
死ねばいい、と思いながら白線の内側で電車を待つ。
携帯はまだ震えている。留守番電話の機能、タルいけどつけておけばよかったなーと考えながら、ポケットから引っ張りだして着信相手の名前に目を細める。線路に投げ込んでやろうかと思いながらタッチ一回で着信を切った。

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