2017-09

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月を踏んで影を睨む

「熱が」
「ああ」
「出て、いるから」
「うん」
「今なら」
「うん?」
「何を言ったってデリリウムってことで」
ぜい、と喉を鳴らして、二回咳き込んで、俺を見て、笑った。
「ね、すきでした」
「ああ」
「すきだったんです」
電灯を消した部屋の中より外が明るくてカーテンがぼうっと光っている。
その光に右頬だけを照らされてお前は笑った。
「思い出せてよかった」
「そうか」
俺はお前の頬を撫でた。明らかに病んだ熱がこもっている頬に手のひらを当てる。
きもちよさげに吐息をもらしてお前が目を閉じる。
しばらく、手のひらで触れていた。どくどくと脈打つのが伝わる。
じんわりと手のひらがよくない熱に暖められていく。いくら手のひらで熱を吸い取ってもお前の熱は引かない。
血流と一緒に体温が上がって行くのが触れているだけでわかるのに何もできない。
「は……青葉君、遅いな……」
お前がこぼす1人言に俺は返事をすることができない。
目尻に涙が浮かんでいたから手のひらを滑らせて人差指の関節で拭った。
紫に腫れた唇の端が呼吸の度に震えている。
大きく上下する胸はきっと呼吸するだけで痛んでいるだろうに、こうして荒く呼吸を繰り返すのはこれが初めてでもないのだろうに、この部屋には痛み止めすらもない。
「りゅうがみね」
多分そこから間違えた。俺は。
「りゅうがみね」
「なんですか」
お前の手が重たげに持ち上げられてお前の目尻に触れたままの俺の指に触れる。
「もうだめなのか」
「さあ……」
返事と一緒にお前の頭がごろりと窓の方を向く。
俺の指に触れていた腕がぱたりと畳の上に落ちた。
「りゅうがみね」
俺はそれすら間違えた。あの時。
「りゅうがみね!」
「……泣かないでくださいよ」
俺に後頭部を向けたままお前が言う。
「今日、助けてくれただけで十分だったんですから」


【こうして俺は責任から遠ざけられた】

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