2017-11

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よあかし


光。静雄さんの気配がする方に光が見える。
ふらりと揺らぐあれはライターの光だ。カーテンを引いて真っ黒な部屋の中で揺れている。かちりと律儀に鳴ってふっと消える。
ころりと転がって布団から抜け出してカーテンを下から覗けば隙間から藍色。
「帝人?」
上から降ってきた声は低いからよく響いた。心地よく。
「うん…起きました。いま…何時…」
「まだ寝てろ」
ふー、と溜め息に似た吐息の音。からりとサッシと窓枠が触れあって鳴る。細く、細く開けられた窓から微かに朝の湿った匂いのする夜気が流れ込んできて耳から頬を撫でていく。吸い込んだ空気の底に少しいがらっぽい煙の残滓。なげやりに固い床に頭を預けたまま仰向けに静雄さんを見上げる。外に流れ出ていく煙。
「……しろい」
「まがいもんだ……白の」
「どうして?」
「混ざってっから。……毒が。」
「……ふうん」
戯れに手を上げて、重力に逆らうのをひどく億劫に感じながら目の前にそびえる右ふくらはぎの脛毛を撫でる。ちりちりと手のひらに触れるこわい毛。二度、三度と撫でているとくすぐったそうに左足の後ろに逃げた。
「しずおさん」
「……なんだ」
「今日……、」
言って、言葉を切ったまま目を閉じる。うっすらと瞼越しに光を感じられるくらいまで朝が近付いてきている。
「今日?」
「……今日、から。文化祭の準備で忙しくなるので…しばらく帰りが遅くなるかも知れない……です」
「わかった。帰り道暗くなるならメールしろよ」
「はぁい」
甘やかされるのが気持ちよくてお腹の底で大笑いの大満足。好き。幸せ。文化祭は嘘。

ずっと離れてみたかった。

「遅刻するぞ。」
タバコをもみ消して静雄さんが僕を見下ろす。室内へ顔を傾けてそっぽを向いたらくつくつ笑って裸の足が僕をまたいだ。ぺたぺたと台所へ向かった足が、一旦閉じた目をまた開いたら戻ってくる。
僕の横にしゃがみこんでシニカルに笑った。人差し指がわざとらしい鋭さで脇腹をつつく。
「こらー。起きろー」
「んんー…」
ぐずれば右手が伸びてくる。横たわった僕の胸元からボタンが外されていく。きっと冷たいだろう指が片手で、器用に。
うんと伸びをしたら前がはだけた。
寒さに身震いをする。体に鳥肌が広がっていく痺れのような感覚を味わっている僕を見て、静雄さんが笑って立ち上がる。
「ほら、起きろ。いつまでもそのまんまじゃ風邪引くぞ」

僕から離れていく足を見ながら大好き過ぎて胸が裂けそうだと思って涙腺が緩んだ。わかる?と静雄さんの手を取って胸に当てたいと思いながら自分で自分の胸を押さえて丸くなる。
静雄さん。触ってほしい。裂けそうなんです。ここから。溢れてきて、もう目一杯ぱんぱんなのに終わらないから。
いずれきっと裂けて出てきちゃうんです。
どんな色をしてるだろう……僕は目を閉じて喉を震わせる。涙が目尻を伝って落ちていく。あなたがコンロのスイッチを入れる音。
匂いは知っている。
あなたを想って目を閉じて息を止めたとき…鼻の奥で香る春先のつんとする腐ったみたいな土の匂い。
だから本当は、見せたくないんだ。
僕は胸を押さえて背中を丸める。裂けてしまっても、溢れないように。僕の気持を、閉じ込めるために。


夜が死ぬとき/朝が来るとき

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