2017-11

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すれ違い静帝

腕の中で呼吸をしている。膝の上の重み、預けられる頭、全部他人には諦めていたもの。

それが、俺みたいになりたいと言う。思わず零れた笑いは自分への苦笑と自嘲まじりの困った笑いだ。

一掴みに出来そうな頭をそっと撫でて、手触りのいい髪を指先で玩ぶ。どう、返事をしたらいいんだか。

俺が強かったら暴力なんざ振るってねえよ。言おうかと迷って、止める。



凄いですね、と俺を見る時の目が、俺だけを見ているのが。



「お前はいいんだよ、そのままで」

自己満足だ、お前の。頭の中で恋心が喚いた。

「嫌ですよ」

見下ろした顔は唇を尖らせている。愛しくて、胸の中が一気に和らいで、春が来た時のように浮ついてしまう。

「ばぁか。いいんだよお前は。普通の…なんだ、男子高校生?で。」

恐れも何もなく、俺の言葉を受け止めて何のてらいもなく気持をぶつけてくる、それが愛しくてたまらねぇんだ。言葉には出さない。俺の恐れを気取られたくない。

深く、一つ、息を吐いて、髪を撫でていた指を滑らせて耳の後ろをなぞる。口づけるつもりで。それを、俺より一回りは小さい手が阻んだ。

節くれ立った俺の手を滑らかな両手が捕まえて、短い指を絡めてぎゅうと握る。仕草が愛しくて唇が綻んだ。ぎゅうぎゅうと握ってくる手を唯一自由になる指で叩く。こうして遠慮なく触れてくる、それがどれだけ嬉しいか。わからない。お前には。この他愛ない触れ合いが、俺にどれだけ得難いか。



だからお前の前でだけは怒りに任せての暴力じゃなくて。

なんて、柄でもねぇとまた笑った。膝の上で帝人はまだ俺の手を捕まえて拗ねている。

「帝人」

守ってやりたい。そんな気持になるのはいつぶりだろう。初めてかも知れない。

お前がどんなでも、俺とこうして過ごしてくれただけで充分だ。

だっていうのに、ちくしょう。

お前に全部ぶちまけて、それでいいんです、そう言って笑うお前が見たい。



凄いですね、と俺を見上げる目も失くしたくないっつーのに。

贅沢だ、と自分を笑って切って捨てて、離れ難い肌から指を引き剥がす。

あ、と無意識だろう、小さな声。

俺が返事を考えるより早く、寂しさを取り繕うより早く、帝人が振り向いて俺の腹に顔を埋めた。



体全体をぶつけられて、預けられて、心臓が震えた。



腕ががくがくする。はは、と笑いが零れる。しがみついてくる帝人の腕が俺の輪郭をとらえている。

「帝人」

抱きしめ返したいのを必死で堪えた。お前が思ってる程強くない。それを露呈するのが、馬鹿な程怖い、なんて。気付かれたくもない。震える手をなんとかなだめて背中を撫でるだけで精一杯だ。



駄目だ。気付かれないように拳を握った。きつく。

俺の弱さまで押し付ける気はないのにお前が春に咲く花のようだから気持がことごとく綻んでいって、いつしか、本音が零れそうになってしまう。駄目だ、と首を振った。静かに。



帝人は俺の強さに憧れてんだから、俺は。せめてその夢を壊さないようにしなきゃなんねぇんだ。

奥歯を強く噛んで、唇をひき結んで帝人の背中に腕を回す。



弱音を吐く心を握りつぶして。





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