2017-09

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夢を見るのはやめてよ

「ダーリンとかハニーとか……」
吐息だけで笑う、その様子が似ている。

「ていうか、自分の父親がよその男から性的な目で見られてる、とか」
また笑う。うつむいて、睫毛も伏せて、息だけを短く吐いて笑う。唇の端があんまり面白くなさそうな形に歪む。
彼にしかできないと思っていた笑い方で、黒いセーラー服の女の子が笑う。
はだしで。
夜の台所だ。食器棚の中のコップが白々と窓の外からの街灯の光に透き通る。安っぽい蛍光灯はむっつりと暗く黙りこみ、彼女は爪先でのの字を描く。床が重心を変えた拍子に重たい音で軋んだ。
赤いはずの爪は影の中でなんだか黒く見えた。
「笑える」
うつむいた顔に耳から滑り落ちた髪がかかる。彼とおなじぐらいの丈の髪。
「笑えるわ。」
笑ってないじゃないか、という言葉を思いついただけだった。
二人の間で夜が更けていく。
彼女は黙って床を見つめていた。

彼の葬式の話を聞いたのはいわゆる共通の知人経由で、事故死だとかいうその知らせに俺様は凍りついてしまって、行くか行かないか、行くとしてもどういう関係として説明すべきか(彼は決して俺様の知り合いでも友人でも知人でもなかった)、迷っている間に時間は容赦なく過ぎ、結局通夜にも告別式にも出そびれた。
それきり何が出来るわけでもなく、特急便でクリーニングに出したにも関わらず預けっぱなしだったスーツを引き取りに来てくださいと面倒そうなおばさんの電話を受けてやっと、そういえば彼はこの間死んだんだっけ、と思いだして。
ただぼんやりと悲しみながらアパートの階段を降りて、古ぼけた郵便受けに死んだ人間からの手紙を見つけた。
初めてもらう彼から俺宛の手紙だった。
すぐに開ける勇気は出なくて、尻ポケットに突っ込んだままスクーターでスーツを引きとった帰り、児童公園の柵の上で開封したその内容は、お前にやり忘れたものがあるから取りに来い。笑える話だ。事故で死んだくせにまるで自分の死を予見したみたいな中身。形見だと思って取っておけ、とか今更すごくシャレにならない。

手紙で知った住所は前に把握してた繁華街ど真ん中のマンションとはぜんぜん違う、普通の住宅地の中の閑静な一軒家だった。ありがちな木造建築と塀からはみ出す松の枝を見上げてはあ…と声にならない息を吐く。
オヤとかのなんかな、でも実家は東北とか言ってたはずなんだけど。思いながら、手紙を握りしめてチャイムを押す……勇気が出なくて五回ぐらい帰ろうとした。
けどやっぱりどうしても、どうしても気になって引き返して最終的にもう勢いのまま、古い四角いチャイムを。

「はぁい」
インターホンじゃなくて直接玄関が開いた。
思わず一歩下がった俺様を叩きに半身を乗り出した姿で胡乱気に見上げて、中途半端な丈の髪を耳にかけながら黒セーラーのジョシコーセー、が。
「は、誰?」
透き通った声で問いただした。
正直、とても動揺した。だってあの野郎俺様とおなじように、おんなじ、形で、旦那を。
だから俺様とあいつは。
だったっていうのに。
「あ……あの、俺様……」
たじろぎ、そして何故か一瞬自分が怒った事に更に動揺して舌がもつれた俺様を眺めて、その子はふ、と笑った。
唇の端を歪めて。俺様を見上げて。
その笑い方はあんにゃろうにとてもよく似ていたので、俺様はこの子は娘だと確信した。そして、結局感じたのは苛立ちだった。先に無間地獄を抜けたあいつに対して。及びあいつの移り気に対して。優越の混じったいらだちだった。未だに一途な自分を肯定するための怒りだった。
そんな俺の思考を断ち切ったのは、は、というその子の溜息だった。
「さ、どうぞ」
引き戸にかけられていた指が離れる。体を引いて、彼女は中を示した。まだ三和土に片足を下ろしたまま。
「え、いいのか」
知らない人を、と、自分が言うなの言葉を口走った俺様に、彼女は眉間に皺を寄せて笑ってみせた。
「ふ、だってあなた父さんの知り合いなんでしょ」
薄暗い玄関で、彼女が開いた戸の隙間から午後1時の光が差し込む。
「父さんの知り合いってだけで十分私には有害です……どうぞ?あがって?香典返しのあまりのお茶とかしかないですケド」
棘を含みながら、彼女はたしかにおもしろがっていた。俺様を。俺様という闖入者を。俺様という存在を。
濡れたような白目を光らせて、彼女は俺様に背中を向ける。いかにも制服然としたかっちりしたスカートの裾が揺れるのに思わず目が惹かれた。俯いた俺様を廊下から振り返る、彼女はやっぱり笑っていた。
「会いにいらしたんでしょう」

廊下をまっすぐ入った突き当たり、南向きの10畳ほどの和室に仏壇はあった。遺影はなんだかとても普通で、あっさりしていた。仏壇の前に設えられた祭壇の上にでかでかと飾られた黒い枠の中に、フルカラーの笑顔。
見たことのない表情に対面して俺様はなんだか拍子抜けしてしまった。不機嫌なところの微塵もない、まるで知らない人の写真だった。手を合わせたままぼんやりしていたら、横合いから声をかけられた。
「笑ってるでしょ」
「え」
彼女は邪魔そうに髪を耳にかけ、急須と茶碗の乗ったお盆を俺様の座る座布団のすぐ横において自分も座った。
「みんな、笑ってるのに意外な顔するの。……で、私もそうなのよ。」
お茶をつぎながらため息を付いて、ちらりと笑って前髪越しにこちらを伺う。斜め座りの姿は正座にはもう飽き飽きした、といった雰囲気で思わず俺様も笑っていた。
「俺様もだよ」
「でしょう」
にんまりと笑う。どうぞ、と差し出されたお茶に軽く礼をして手をつける。
ず、と啜ってから自分がまだ線香もあげていない事に気がついた。
「あーーーお線香……」
やっちまった、と思ってお茶を置く。自分の分を注ぎながら、彼女は軽い調子でいいわよ、と言った。片手で茶碗を持って酒か何かのようにあおる。
「そういうの別に信じてる人でもなかったし」
「えっ」
「意外です?家では仏壇に花を供えるどころか鐘一つ鳴らしたことなかったわよ。」
畳に左手をついて、すっかりくつろいだ様子で彼女はけろりと言って、自分にお茶のおかわりを注ぐ。
「戒名も……私の名前から一文字入れたけど、意味があるんだか。」
初対面とは思えないほどさばけた口調の彼女に俺はすっかり圧倒されていた。戒名、と聞いて、まだ知らぬ名前の手がかりを得ようと位牌に目を凝らす。が、人名と思しき字は見つけられなかった。そんな俺の戸惑いを見透かしたかのように彼女は、いろはよ、と声に出す。
「五郎に八、でいろは。漢数字の五の方の五郎ね。それに数字の八。それでいろは。……あなたは?」
佐助、と名乗ると彼女は眉間に皺を寄せて僅かに考える素振りで宙を睨んだ。
「聞いたことないわ」
あっさりと白状して、彼女は立ち上がる。
「で、気は済んだ?お帰りはあちら。」
「いや」
遮った俺を彼女は少し苛立った風の目付きで睨んだ。
「君のお父さん、から」
なぜか、名前で呼ぶのがはばかられて、歯切れの悪い言い方になった。名前が呼べなかったのは彼のことをあだ名でしか呼んだことがなかったせいで、そうして独眼竜、と彼女の前で口に出すのはなんだかとてもためらわれた。
「これを」
とっさに尻ポケットにねじ込んでいた手紙を差し出す。受け取ったそれを彼女は開いて、眉間に派手な皺を寄せながら目を通し、ふくらはぎを自分の足で掻いて、ふうん、と言ってそれを俺様に突き出した。
「……父さんの字ね」
認めるまでに少しの間があった。俺様が受け取らないでいると、彼女は手紙を上下に二三度振って早く受け取れと促した。
手紙が自分の手を離れると、彼女は腕組みをしてそっぽを向き、そうしてまたふくらはぎを爪先で掻いた。バレリーナのような仕草で。
そうして、それは都合の悪い話を切り出された時の彼の癖だった。
思い出してめまいがするような気持ちの俺様に、彼女は仕方ないわ、というつぶやきを投げてよこした。
「滅多にここにいない人だったからそれがうちにあるかはわからないけど」
そうして片足だけでくるりと回って、彼女は縁側に続くガラス戸を引き上げた。
「こっちよ。父さんの書斎。」

飽きた!

このあと部屋で猿飛くんあての本が見つからずしばらく泊まりこみで発掘作業してけば?ついでに形見分け手伝ってみたいな展開になり、いろはちゃんの安全だわ、だってあなたゲイでしょ、の言葉に動揺した猿飛くんが本が雪崩させた結果、伊達から真田くん宛の宛名のない手紙が一通だけ本の中から出てきたりして真田くんに伊達から矢印出てたのを薄々知ってたとかいろはちゃんが言ったりとか。
あと家康に引き取られるとかいえやっさんはいい人そうだから嫌いだとか、いえやっさんはわたしのおとうさんのことがどうしようもなく好きだったんだと思うとかいろいろ。

伊達佐は若かりし頃真田くんへの気持ちという共通点だけでくっついてバカみたいな同棲を一時期した後絶縁しています。
成実が来て佐助がいる事に動揺したりとかいろはちゃんがバッサリ切り捨てたりとかそういうのもあったりした。

ちなみにいろはちゃんが佐助をゲイだと見破ったのは右耳だけにピアスしてたからという単なる迷信による当てずっぽうとかいう設定まで作っていた。
伊達佐の馬鹿みたいな同棲生活書きたかったんだけど。DuffyDuffyDays略してDDDとかで。
読みたい人がいたりとかあと私の気が向いたら続ける。

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