2017-09

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ちよちよ

捏造ばさら。

きれいなひとだったと誰もが言うのだ。
私の母親のことも織田の奥方のことも秀吉公のかつての側室のことも私のことも
死んでしまった女はみんなウツクシイ。
死んでしまった女はみんなオロカだと私は思う。
思いながら、くちびるを重ねる。
体温の高いくちびるに私の紅を押し付ける。

「へえ…………やはり元々は綺麗な顔だ」
「左近、余所見をするな」
「花嫁を見ないで誰を見るのさ。きみも見ろよ。大谷はやっぱり元々は綺麗な顔立ちだよ、目のあたりがそっくりなのだからあの娘は母親でなくて大谷似だろう。とてもキレイだ」
「左近!」
「うるさいよ」
私は笑う。
石田はいらいらしている。いらいらしながら空の杯に私が酒をつぐのを待っている。
「なんだ、きみっていうヒトはめでたい席で。なんだかねね様に似ているのが気に入らないのか。それとも悪酔いか。」
徳利をふる。ちゃぽんと音が鳴った。
「ああだけど少しだけ濃姫殿にも似ているかな」

死んでしまった女をみんながウツクシイと言うのだ。
「刑部の娘」
「そうだよ。……いや、姪だったかな?ところでさ、ねえきみ酔っているだろう。食わないで酒を入れるからだよ。飯を食えよ。」
「ムスメ」
「だから知らないってば」

真田のところに嫁ぐのだ。大谷の娘だったか姪だったか。カゾクになるのだ。大谷と真田が。
ばかだなあ、と思う。膳のヘリを掴む震える指。しなやかで節くれだった指。触りたいと思うよりも触られたいなと思う。思いながら徳利を自分の膳の影に隠す。花嫁は白い顔に唇ばかり紅色で、それが昔見た……まだ帰蝶だった濃姫殿に似ていると思った。マムシの父親のもとで、おしろいもしていないのに白い顔をして、唇ばかり塗ったように赤かった。気が触れてしまった娘のように野に立って、ひなぎくなど2、3本引きぬいて持っていた。それを私は祖父から聞いて見てきたように知っている。
徳川殿がウツクシイと思う女。
くだらない生き方をして滅んだ女。
織田の魔王のそばにいながら生涯子供を成せなかった女。
どうせ何をしたって子を産まぬ限り役立たずと罵られるのだから戦場になど出なければいいのに、とその鬼女のような働きを聞きながら私は寺で酒を飲んでいた。坊主のマラは口に合わなかったが般若湯はうまかった。そうやって中国の仙人のように暮らしていたからどれぐらいその寺で過ごしていたか忘れたが、しばらくそこにいたように思う。毎日毎日広げられるものだから痔が治ることがなくて辟易したのと、般若湯の隠し場所にもぐりこんでいた時の湿った土の匂いばかり憶えている。
私はいくつだったか。
忘れた。そも、数えの歳すら曖昧だ。ともかく私は子供で、会う人間会う人間すべてに対して、私はこいつと寝ることが出来るだろうかと考え、想像し、大抵の人間とは寝ることが出来ると考えて、ならばどうやってそういった仲へ持ち込んでやろうと考えばかり巡らせて舌なめずりをしていた。

絶頂が唯一の幸福だという宗教は今も頭をめぐり血肉の中で続いている。
「刑部」
かたかたと震える指の爪が漆塗りの膳を叩く。
酒を飲みながらそれを見ていた。
ばかだなあ、と思う。ヒトを肩書きだけでしか見ないからこういう目にあうのだ。
石田は人間を見ない。まず肩書きを見て、その肩書に沿った生き方をしているかでヒトを判断する。好ましいか、残滅すべきか。だから裏切りは罪だ。ばかじゃないかと思う。この下克上の世の中で、家臣は家臣らしく主君をどうこうとか、ばからしくって仕方ない。下克上が終わったというのは嘘だ。誰にだって欲がある。何が欲しいあれが欲しいあれがあればこれができるのにこれがあればそれができるのに。その目的が民のために善政だったり自分の贅沢だったりするだけで別に、自分がしたいことをするために、という動機は全く変わらない。全て自己満足のためだ。その自己満足が他人のためになるかそうじゃないかの区別だって別に必要か?と思うのだ。ナニだからイイ、ナニだからワルイ、とか。
起こしてしまえば全て史実で人間の道徳の挟まれる余地もなく過去だ。

だから私は会う人間全てと寝たい。寝てしまってすべての人間と関係を持ちたい。善悪もなにもなく。
「ギョウブ」
石田はばかで、かわいそうだ。
そもそもは秀吉公が悪いのであるのだろうなあ、と思う。自分の手で側室だったかなんだったか、アイシテイタとかいう女を殺したとか聞く。その頃石田は子供だったのだろう。そして秀吉公を今よりも神様のように崇めていたのだろう。
大谷の屋敷で家康と寝た時にその話を聞いた。
前田慶次によって暴かれたのだという。竹中は一部始終を知りたがる子供らに静かに伝えたのだという。それがタダシイ判断だったと。秀吉様がそんなことをするはずがないという佐吉の否定は更に否定されたわけだ。そしてそれは当たり前に佐吉の正道になった。だから石田の妻は全てどこかからのヒトジチだ。そして「妻」だ。不義は許されない。妻だから。妻だから貞淑におとなしく子を成して夫にその身を捨てて仕えなくてはならない。夫の邪魔になるなら空気を読んで自害するか、夫に切り捨てるよう、に。

斜めの目付きで石田が花嫁を見ている。
「きみ、ほんとうに何か口に入れろよ」
鯛の乗った皿の上に家紋付きの袖が落ちていたからのけてやった。
石田はやっぱりばかで、かわいそうだ。

坊主憎けりゃ袈裟まで憎いで徳川のやり方まで否定するからこんな目に遭うのだ。
織田のとこでヒトジチで、憧れの濃姫サマはそりゃあ頑張っただろう。役立たずにならないようにそりゃあそりゃあ頑張ったろう。それをずっと見ていたのだろう。その頃徳川はたったの子供で、濃姫様が頑張って頑張って頑張るのを、それはちがうと言うことが出来なかっただろう。どうせ届くこともない言葉を、口ごもったのだろう。
見なくてもわかる。
黒焼きのイモリだのそういった迷信や裸足のお百度参りや側近からの攻め立てや陰口の向こう側に行くためになんだってしただろう。夜をそうして過ごして昼には火薬の匂いをさせていただろう。
徳川はヒトジチの姫たちを自分になぞらえただろうか。笑える話だ。それでも徳川は、最初は嘘っぱちのカゾクたちに愛情を与えて与えて与えて本物にした。養女たちを本当の娘のようにかわいがり嫁に出した先の婿を息子と呼んで、キズナだとかなんとか、うまいkとやって、あのザマだ。秀吉公の掟に背いただのなんだの石田は怒り狂ったが、そのザマがこれだ。
明暗分かれとるなあ、とか。思ったりして大谷にこの間、一戦終わった後の睦言がわりに言ってみたら爆笑していた。

ヒイヒイ笑いながら布団を叩いた大谷の手をこいつが見ることは永劫ないんだろうなあ、と思いながら据わった目でまだかたかたと震えながら花嫁を、斜めに睨んでいる石田を見下ろす。背筋を伸ばして。

かわいそうだと思いだしたついでに、どんな時でも心配をしている儂に対して、大丈夫よ、竹千代くん、と、濃姫様は笑ったのだ、と、徳川が言っていたのを思い出す。
徳川は全員に子を持たせようと頑張る人間だろう。石田は石女と罵るような人間だろう。
けれど私は石田と寝たいと思う。
屏風の前で客を相手にメデタキナと大谷が笑っている。真田は酌をしに回ったあちこちで小突き回されて赤くなっている。嫁ぐ娘の唇は赤い。
真田は大谷ときちんと家族になるだろう。嬉しかったり悲しかったり、どこまでも命運を共にするだろう。
石田には家族はできないだろう。

大谷は賢く、石田は愚かだ。

私はいずれいつかどこかで、大谷の娘はウツクシカッタと、誰かに、言うだろう。
いずれ負ける戦のあと、ユウレイのように小早川の前に現れて裏切りを理由にしてともにした床の中で。
ちらりと見た小早川は座敷の隅で震えている。ちらりと舌なめずりをして私は石田の世話にとりかかる。
関ヶ原は負けるだろう。真田は義にも情にもあつい男だ。想像しただけで各種あらゆる愛で胸が満ちる。
散々に負けた戦の後、ユウレイのように現れてユウレイにあるまじき熱を孕んで小早川の枕元に立とう。
小心者の小早川のことだ、萎えてしまえば女の格好をして。
父親を勃たせるためにハハオヤに生き写しの顔と体を女の着物の殻に押し込めた時のようにしなをつくって。
ふふふ、と、笑いながら、口にするだろう。

大谷の娘はウツクシカッタ!



しまさこなんでBASARAに出ないんですかね
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ようわからん習作

※捏造ばさら
真田の娘の話。
BASARAに出てくる片倉小十郎の息子、片倉重長に大阪夏の陣以降傅育されて、結局重長の妻になった阿梅ちゃん萌えかわいいというはなし。ではないかもしれない。


父が嫁けと命じたのかも知らず、幼い頃から兄と父と慕って育った男についに娶られる事になった。
「阿梅殿」
お説教をするようなきまじめな顔で私を呼んで、実は前々よりそなたの父上から婚儀の申し入れを受けていた。よき日に青葉城の主君のところへ、などと言うから笑ってしまった。
そうすると憮然とした顔をするからまた笑ってしまって、ついには袖で目元を拭わなくてはならない程の大笑いになってしまった。
「阿梅殿!」
妹弟を泣かしたときと同じ調子で名前を呼ばれてようやく笑い止む。
男前がしかめ面をしているのを見上げた。
「わたくしに否やがござりましょうか」
また、くすりと笑いが零れた。

父は勇猛果敢だったが愚かだった。一国という誘いを蹴って、不利とわかりきった戦で忠義のために命を散らした。父の愚かのために叔父上……信之さまも本田様も心を砕き、そうして娘のわたくし一人のみならず妹三人弟一人、父に何の恩義もなく何の縁もあるでなし男のもと、父が敵とした天下人の世に育った。
そして今、兄さま兄さまと懐き、父親の幻想をその優しさに温厚さに誠実さに見出していた男に婚儀の申し入れなどされている。

「ござりましょうか、ねえ」
膝の上で握った手を開く。口の端を持ち上げて、首を傾げれば向かい合う顔が険しくなった。

たとえ父のもとで育ったとて望んだ婚姻など出来ぬが道理。たとえ父があの時、天下人を選んで一国の主であったとして、落ちぶれかけた家の顔も知らぬ、ただ縁を求めるだけの輩に是非にと乞われて形ばかりの妻になることだって、もちろん有り得る事であるのだ。
そも、わたくしたち五人の姉弟、真田と片倉家の間に何があるわけでもなく、ただ当主である目の前の男の温情に縋っているだけの穀潰しの身。
真田の名を欲しがるどこぞへと嫁へ出され、片倉家の地盤固めがために使われるのが順当なのだ。

それをこの人が欲しいという。わたくしの父上とのかねてからの約束であるという。そのためにわたくしを、妹を、弟を育ててきたのだという。
そうして、わたくしなどを欲しいと言って、いいだろうかなどと尋ねてくる。生真面目な顔で。
笑ってしまう。この人に娶られればわたくしは望んだより、随分と幸福な生涯を過ごすことが出来る。

「重長兄様」

わたくし。わたくし一人の体と心だけで、妹たちの背筋を伸ばしてやれる。
弟に真田の姓を、与えることだって出来る。
不自由なくとも肩身が狭い、それはわたくし達のせめてもの矜持であった。
のうのうと受け入れるわけではない、恥を知りながら、恥と知りながら、それでも生きるために。
それがわたくしたちのいいわけであり、わたくしたちを白石城で一人の人たらしめる呪文の文言であった。

今更戦国に生きた父を身勝手となじる訳でもない。ないが、選ばされるわたくしに、実質の選択肢など与えてくれなかったのは父だ。
わたくしの膝の上の手を重長兄様の熱い手が握る。一回りどころか二回りぐらい大きな手が、わたくしに鶴を折ってくださった手が、わたくしになぎなたの握り方を教えてくださった手が、わたくしに水蜜桃を剥いてくださった手が、わたくしに、庭で隠れて泣きじゃくるわたくしの、頭を撫でてくださった大きな手が、わたくしの手を、縋る風情で握る。
「阿梅殿。大丈夫だ。誰に反対をさせようものか。政宗殿も認めてくださる。」
まるで見当はずれな慰めをして、わたくしの背中をそっと撫でる。

腹の裡でひっそりと、かなしく微笑みながら涙をこぼしてうなづいて、弟に、二人揃って破廉恥となじられて笑った。今度は二人で顔を見合わせて。
笑って、半年後、わたくしは綿帽子を被って三三九度の杯を交わした。

そうして三年、奥方という暮らしにも慣れてきた秋に闖入者があった。
障子を何の挨拶もなく引き開けた、右目を黒の正絹で覆った男は、年をとってなお獰猛な顔つきで私を見下ろして
「お前が阿梅か」
言うなり、目尻をほころばせた。
「なるほど、眉が真田に瓜二つだ。なあ片小」
ごき、と首を回して振り向く先に夫がいる。
ぱちくりと瞬いたわたくしの前にどかりと胡座をかいて、にやりと歯を見せて笑った。
「……にいさま、こちらはどなたでしょう」
救いを求めて見上げた先、夫が渋い顔をする。
眼帯の男が口笛を吹いた。
「父上様のお知り合いですか?」
膝の上の繕い物をよけて膝を正す。尋ねれば、見つめる先でゆっくりと、眼帯の男が驚愕するのを感じた。
「お前」
喘ぐように言う。
「俺のことを何も真田から聞いていねぇのか」
「父上様は、戦のことは家では何も」
答えると、不機嫌そうに顔をぷいと背けた。
その顔に悲しみを見つけてわたくしは、伊達政宗だと吐き出された名前を聞いてわたくしは。

父の罪深さをもう一度、知ったのです。



石田どころか真田娘にもあんた誰される伊達はちょっと可愛いかなと思ったら、だてさなだかさなだてだかなんだかようわからんもんに仕上がった。

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